映画「6人の嘘つきな大学生」の考察まとめ

映画「6人の嘘つきな大学生」は、大学生6人が参加する最終面接を舞台にした心理サスペンスです。
原作小説は非常に緻密に練られた伏線が特徴で、その複雑な人間ドラマが話題となりました。
しかし、映画版ではいくつかの変更が加えられ、原作の魅力が削がれてしまった部分もあります。
本記事では、映画を観たうえでの考察を行います。

目次

考察① 映画版は原作の緻密な伏線を完全には再現していない

映画の最大の問題点は、原作小説の伏線回収に対する忠実さが欠けていたことです。
原作では、登場人物の行動やセリフの一つ一つに深い意味があり、後でそれが伏線として回収されることで、観客や読者に強い印象を残します。
しかし、映画版では、いくつかの重要な伏線が削除されており、そのために物語の整合性や必然性が薄れてしまっています。

具体的には、原作の重要なエピソードが映画では省略されており、その影響で登場人物の動機や行動に納得感が欠けてしまっています。
特に、登場人物たちの告発内容が映画では簡略化されており、真相に至るまでの過程が冗長で分かりづらくなっています。
伏線が巧妙に配置され、最後にどんでん返しがあることで物語が完成するのが原作の醍醐味ですが、映画版ではその要素が大きく削がれてしまっています。

このように、映画版は原作の緻密な伏線を忠実に再現しなかったため、ミステリーとしての面白さが半減してしまいました。

考察② 登場人物たちの行動が不自然で矛盾を感じる

映画版では、登場人物たちの行動が原作に比べて不自然に感じられる場面が目立ちます。
特に、彼らが犯人を推理する過程において、何度も短絡的で感情的な決定を繰り返してしまうことが観客に違和感を与えます。
映画の進行中、登場人物たちは何度も推理を変更し、犯人を決めつけたかと思えば、すぐにそれを撤回する場面が続きます。
これは、登場人物が優秀であるという前提が崩れ、彼らが実は冷静に推理を重ねていないことを示唆しています。

また、このような行動の反復が、観客にとって不安定で落ち着きのない印象を与え、結果的に物語への没入感を損ないます。
原作では、登場人物たちが精密に計算された行動を取り、推理を進める中で徐々に明らかになる事実が観客に驚きと興奮を与えますが、映画ではその過程が雑になり、感情に流される場面が増えています。

登場人物たちの行動が不自然で矛盾しているため、映画版ではそのミステリーとしての緊張感が薄れてしまいました。

考察③ 終盤にサスペンス性が弱ま

映画の終盤は、原作の緻密な伏線回収やどんでん返しがなく、感動的な美談を前面に出す形になっています。
この変更は、物語のサスペンス性を大きく削いでしまう結果となりました。
原作では、終盤に向けて伏線が次々に回収され、観客に驚きと興奮を与えますが、映画版ではそれが感動のクライマックスに取って代わり、物語が感情的な美談にシフトしてしまいます。

特に、原作では重要な謎が終盤で明かされ、登場人物たちの行動に対する整合性が取れます。
しかし、映画版ではその最大の謎が曖昧にされ、観客に対する不明確な結末を残します。
このアプローチは、ミステリーの醍醐味である驚きの要素を欠いており、観客にとってはフラストレーションが募る原因となります。

終盤の美談に焦点を当てることで、映画は感動的でありながらも、本来のミステリーとしての魅力を損なってしまいました。

まとめ

映画「6人の嘘つきな大学生」は、原作の魅力を十分に引き出せなかった点が目立ちます。
緻密に構築された伏線を削ったことで、登場人物たちの行動が不自然になり、物語全体の整合性も損なわれました。
終盤の感動的な美談に焦点を当てすぎたことも、ミステリー映画としての魅力を低下させる要因となっています。
原作の緻密さを忠実に再現していれば、より深いサスペンスと感動が生まれたことでしょう。
映画化にあたり、もう少し原作の精緻な構造を尊重していれば、より優れたミステリー映画として仕上がったはずです。

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